AKITOのプライベートツーリング -HOKKAIDO 2002- 第4章

2002. 07. 29.

テントから出ると、木漏れ日が地面を照らしている。

朝食はビーフシチュー。昨晩のカレーとかぶるけど細かいことは考えない。「食えれば良し」が基本だ。

そして使い終わった食器を洗い、テントを畳み、荷物をまとめる。
ここの野営場は車両乗り入れができないけど、貸し出されたリヤカーに荷物を載せ、バイクとサイト間を移動できる。
SPITFIREにはハードサドルバッグキングツアーパックを着けたので、出発するときはクルマのトランクのように荷物をポイポイ放り込むだけ。面倒なパッキング作業も荷崩れの心配もない。

そして阿寒湖のアイヌの街に別れを告げ、さあ出発!

目指すは釧路湿原だ。

ペンケトー(アイヌ語で『上の湖』の意』)とパンケトー(『下の湖』)。

阿寒横断道路(国道241号線)沿いの「双湖台」より撮影。
残念ながら写真の通り、ペンケトーはほとんど見えない。

これも、先住民族アイヌが開拓の旅の途中、発見したのだろう。

写真も撮ったので再出発・・・と思いセルを回す。

しかしSPITFIREの様子がどこかおかしい。
「ガシャガシャガシャ」というメカノイズが妙に大きいのだ。

もしや、と思い、エンジンオイルのゲージを覗き込む

!!!!!!!

オ、オイルはどこへ!?

ゲージは、オイルが規定量の半分以下である事を示していた。
車体を注意して見てみると、クランクケース付近が油で濡れている。

「これは…オイル漏れか!」

急遽レンチでクランクケースのボルトを増し締めた。
さて、これからどうする?

ここは携帯電話の電波も届かない森の中の国道。バイク屋なんてあるはずがなかった。
とりあえず最寄りの町を目指して、ホームセンターでオイルを買おう。

巡航速度60km/hで再び国道を東方面へ。
すると「ようこそ弟子屈町へ」の看板が。

やったぜ!これで何とかなるぜー!

だが甘かった。見落とした看板があった。

「市街地まで45km」

ここでまた1つ北海道について少し記そう。

誰もが見た事はある、青い看板の四角い道路案内標識。

「 渋谷 32km 川崎 13km」

とか書いてあるやつだ。
これは関東で見られる道路案内標識である。
しかし北海道ではちょっと違う。

「札幌 336km 帯広 179km」

…そう、桁が1つ多いのだ。
だから「市街地まで45km」というのも、北海道では近場という感覚だったりする。

さて2時間後。出血多量のSPITFIREで弟子屈市街に到着。
一刻も早くの輸血が必要だ。

ホームセンターを探しに摩周駅前をうろつくが、コンビニすら見当たらない。
あるのは少数の個人経営の小さな店だけ。

僕は焦った。

「もしや、旅はここで終わりか?」

そんな考えが頭を過ぎった。
しかし、ついに1軒の自動車整備工場を発見する。

「やった!ツイてる!」

大至急オイル交換を頼んだ。
しかし、幸い中の不幸というのか、置いてあったバイク用オイルは「10W-30」。
これは原付などの小排気量車に使われるオイルで、「10W-40」が指定されている空冷400ccエンジンを積んだSPITFIREには少し性能が足りない。

しかしここで入れないわけにはいかない。
涼しい北海道内での走行なら熱ダレによる心配も無いと思い、そのオイルをお願いした。

1時間後。元気になったSPITFIREで南の釧路湿原を目指す。
メカノイズはすっかり大人しくなり、心地よい風と共に快調に走る。

だがしかし、50kmくらい走ったところだった。

ブルブルブル  ガチガチガチ

「・・・・・さ、寒い!?寒いぞ!!」

ケータイで天気予報をチェックする。

『釧路地方の最高気温 12℃』

こ、こんな中でテント張って寝れるかよ…

挙句の果てに、こんな看板まで見えてくる。

「Jusco釧路店 この先直進94km

誰も文句を言う者はいなかった。俺とSPITFIRE TOURERは回れ右をし、とても人には言えない速度ですっ飛ばす。
弟子屈が近づく直前、総面積が900ヘクタールもある900牧場というところがあったので、寄り道してみることに。

寒かったのは、この曇り空の影響だったのかも。

晴天時の眺めは相当のものらしく、密かに穴場のスポットとして人気があるらしい。しかし今回の眺めは御覧の通り。かろうじて牛がいる事がわかるくらいだ。

このあと、再び弟子屈市街へ。

『道の駅 摩周温泉』にて、1人の女性の旅人に会う。
仕事を探しながら、4月から北海道に来ているらしい。愛車はSUZUKI Bandit250。

旅話をしているうちに、他にも旅人が集まり、色々な旅情報を交換した。

「今週一杯はオホーツクは雨模様だってさ」「あそこのライダーハウスはメシが美味いぜ」「混浴温泉ならここだ!」と、一人一人、自慢の情報を次々に披露していく。これらの情報はガイドブックやツーリングマップルに載っていないものも多く、道の駅は、このように旅人同士の情報が頻繁に行き交う役目も果たしているのだ。

とりあえず僕は摩周湖へ行ってみる事にした。

摩周湖とは弟子屈町東部に位置するカルデラ湖で、世界1級の透明度を誇るコバルトブルーの湖である。
ここには注ぎ込む川も流れ出る川もなく、常に霧に覆われていて「晴れた摩周湖を見ると婚期が遅れる」という伝説がある程である。もっとも、婚期うんぬんの話はせっかく観光客を連れてきても濃霧で摩周湖が見えなかった時のバスガイドさんの予防線という説もあるが。

いよいよ峠道をぐんぐん登っていく。もうすぐ摩周湖が見えてくるはずだ。しかし、進むにつれ霧が視界を不透明なものにしていく。たまらずフォグランプを点灯させた。

そして坂道を登りきった頃、『摩周湖第一展望台』の看板がぼんやりと目に入る。

「いよいよ来たぜ神秘の湖!…て、神秘見えねーぞ?」

実は、霧があまり濃いため、そこに湖がある事すら判らないような状態だったのだ。

濃霧の中のSPITFIRE TOURER

その奥に広がる森。当然、人間の手は入っていない。

しょうがないので、峠を下り、『屈斜路湖』へ行く事にした。

さて、霧で摩周湖が見えなかったのに、何故また湖を目指すのか?

摩周湖の最大の魅力とは「神秘的な景観」であったが、屈斜路湖は実はそうではない。最大の目的は屈斜路湖畔に点在する「無料露天温泉郡」である。

ちなみに俺が知っているだけでも4つはある。

・『砂湯』:湖底の砂を掘ると熱い湯が出てくる。湖が巨大な風呂であるような錯覚に陥る。家族連れ多し。
・『池の湯』:人工的に造られた、まるで池のような大きさの湯船の底から湯が湧き出る。藻多し。脱衣所有。
・『コタン温泉』:目前に屈斜路湖。半男女別。定期的に掃除されているので綺麗。脱衣所有。火・金は利用不可。
・『和琴温泉』:屈斜路湖南に突き出た半島状の島にある無料温泉。脱衣所有。藻多し。湯は熱め。
注)水着着用不可のところもあります。そういう所では潔く脱ぎましょう。

この日は、温泉郡の中でも屈指の人気を誇る「コタン温泉」へ行く事にした。

残念ながら写真は無いが、湖がたたずむ幻想的な風景を見ながらの温泉は、感動としか言いようがなかった。

温泉から出た後もまだ空が明るいので、温泉周辺を少し走っていると火山性ガスのような臭いがしてきた。

突如、開けた視界に山が現れる。アトサヌプリ(アイヌ語で『硫黄山』の意味)だ。

この山は終始火山ガスをシューシュー噴出していて、なかなかワイルドな景観だ。観光客が多いのでそこには寄らなかったが、アトサヌプリ周辺には不思議な風景が広がっていた。降り積もった黄色い火山灰。そこに咲く独特な香りを放つ植物。

思わずSPITFIREから降りる。僕の足は自然にその中へと歩み始めた。

しかしいくら歩いても目前に広がるのは同じ風景。次第に遠ざかる車道。

ここは迷いの森か。

そんな空気が更に奥へと誘う。

よし、不気味だけど今夜はここにステイだ!

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