AKITOのプライベートツーリング -HOKKAIDO 2002- 第3章

2002. 07. 28.

あまりの寒さに、6時に目が覚める。

セローの人は横の部屋でまだ寝息を立てている。
外に出ると、朝日がSPITFIREに反射している。

そうだ。僕は旅人になったんだ。

俗世の価値観や常識、時間に束縛される事なく、まだ見ぬ風景に会いにいきたい。
様々な自然風景、色々な人。それぞれが持つ、自分に出会うまでの軌跡。
そして『生きている』という、色鮮やかな光景。
自分が人間として生き続ける意味のヒント。

それを探す為に、SPITFIREと旅に出たのだ。

さて、今日はどこまで旅をしようか。

朝メシを調達する為、ライダーハウス陸別を出て、近くのセイコーマートへすべりこむ。

洗顔時に使ったタオルを乾かしながらヒレカツ弁当を食べていると、向こうから荷物を満載したアメリカンタイプのバイクがやってきた。

SPITFIREの隣の駐車場に停まる。
ハーレーの黒いFXDL・ローライダー。横浜ナンバー。

「やぁどうも、こんにちは。今日は晴れましたねー」

彼もどうやら朝食をとりにきたらしい。やはり初対面であるにも関わらず、旅話でしばし盛り上がる。
メシをたいらげ、FXDLの旅人と別れ、道東エリア3大湖に1つである阿寒を目指す。

カネラン峠へ。

本州でよく見る風景と違い、住宅や工場などの建物や道路などがない。人間の手が入っていないのである。私たち日本人の古い先祖も、かつてこんな世界の中で狩猟しながら生きていたのだろう。

日本の先祖はかつて冒険者だったと言っても過言ではない。
そして、その血が私たちにも脈々と流れている。

カネラン峠から国道241号に出て、一路阿寒を目指し、東へ。

阿寒までの途中、神秘の泉『オンネトー』へ寄り道。
オンネトーとはアイヌ語で「老いた湖」という意味である。

写真をよく見て欲しい。湖底が見えるのがお解りであろうか。
非常に透き通っていて、神秘的な泉なのだ。

関東に住む自分は、「湖底といえば茶色」という固定観念を持っていたが、ここは違った。
空を流れる雲の影が湖底に映っている。まさにエメラルド色なのだ。

さらに、実はこの奥に無料露天温泉「オンネトー滝の湯」があり、そこを利用させてもらおうと思ったのだが、どうやら珍しいマンガンが形成されているとかなんかでこの年から湯船は利用できなくなっているようだ。代わりに、少し離れた場所にセメントで固められた人工露天風呂が造られたらしく、そこへ行ったがどこぞのレジャー大好き家族連れが占拠しており、タオル一枚の僕はとても入る気になれなかった。

オンネトーを出て、阿寒へ。

阿寒の町には、火山の陥没によって出来た阿寒湖というものがあり、マリモで有名だ。

到着したときは既に夕方だったので、阿寒湖の近くの野営場は至急借り、テントを急いで設営しはじめた。
(真っ暗になると、テント設営に必要な時間は昼間の10倍必要といわれている)

設営が終わり、ガスバーナーで作ったカレーライスを食べた。
どうやら今夜も冷えそうだ。

食べ終わり、野営場のすぐ近くの『アイヌコタン』へ足が向く。

阿寒湖畔には再現された先住民族アイヌの町『アイヌコタン』があり、そこでは民芸品や伝統舞踊を見ることができる。
アイヌコタンには伝統様式で建てられた民芸品店が並び、民族衣装を身に纏った人々が行き交うところ。

現代の日本とは思えない町並みの風景は、なぜか懐かしい空気のにおいがした。

阿寒湖はすぐ裏にあるので、徒歩で行ってみた。

誰もいない夜の湖はとても静かで、時折、水の「チャプ、チャポ」という音が聞こえる。
ボートの桟橋に腰掛ける。

山の黒い影。夜空と水面の曖昧な境。頬をくすぐるやさしい夜風。
その風景に、荒野を旅するかつての冒険者達の姿を重ねる。

「旅は、まだ始まったばかりだ」

数時間後、テントへ戻る。

天井から垂れ下がっているキャンプ道具を眺めながら、少しづつこの日々に溶け込みつつある自分に気がついた。

さぁもう22時。明日も旅が待っている。



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