AKITOのプライベートツーリング -HOKKAIDO 2002- 第10章

2002. 08. 05

人の気配でふと目が覚める。

フェリーターミナル待合フロアのベンチから起き上がり、まだ重い目をあけると、乗船客と見られる人々が大勢フロアを埋め尽くしている。大きな鞄を持った親子連れ、旗を持ちながら集団を率いるツアー添乗員など、様々な人々が乗船受付に並んでいた。それは、まるで自分が長い間離れていた文明社会を見ているような感覚だった。

なんだかベンチでぐぅぐぅ寝ていた自分が恥ずかしくなり、顔を洗って退散する事にした。

朝の港町をすり抜け、一路西へ向かう。
僕はなぜ西へ向かうのか。

それは、どうしても行きたい場所・・・
いや、どうしても行かなければならない場所があるからだ。
そこへ行くために、僕は1,300km離れた北海道までバイクを買ってまでして来たのだから。

だが今日はあえてそこを避けて通ろう。
その場所に行く時は、この大地をフェリーで離れる前夜にしよう。
クライマックスは最後までとっておきたいからだ。

・・・その時だった。
対向車線から、見覚えのあるシルエットがぐんぐん近づいてきた。

「・・・・・あれは!!!」

それは一瞬の出来事だった。
すれ違ったのは、400km以上離れた道東の開陽台で逢ったスティード400乗りの旅人!
まさかこんなところで一瞬だけの再会。二度と逢えないと思ってたのに。
今まで味わった事のない種類の感動を初めて味わった。

「生きていれば、またどこかで逢えるのかもしれない」

旅もいよいよ終盤へ差しかかろうとしている。
今日は太平洋に臨む港町・室蘭で夜を明かそう。
見知らぬ北の街の夜は、どんな表情を見せてくれるのか。

室蘭のシンボル・白鳥大橋を渡るSPITFIRE。
街はもうすぐだ。

この街にも無料で泊まることができる宿泊施設が存在する。
もちろん、今夜はそれがお目当てだ。
もう気がついた人も多いと思うが、北海道はこんな貧乏ライダーにも本当にやさしいところなのだ。

そして夕方には室蘭駅近郊の宿泊施設に到着・・・するが、誰もいない。
うーん、まだ誰もいないのか・・・荷物置いて室蘭の町を走るか!

港町室蘭の地形は、平たく言えば太平洋に南に突き出た半島状の形をしている。
そこに室蘭の駅や市街地がある。

また、突き出た半島の先端には室蘭の道路建設の測量基点となった『測量山』がそびえ立っている。展望スポットとしてはいまいち知名度が低いものの、実は360°景色を見渡す事ができ、北180°は港町全景と白鳥大橋、南180°は太平洋と遥か彼方には函館方面も見る事ができる。
またここは観光地化されていなく、函館山のようにバイクのみ通行禁止というおかしな規則もないため、バイクで山頂まで登っていく事もできる。

測量山から太平洋を望む。

この山の頂上には巨大なテレビ・ラジオ電波送信アンテナが7本ほど林立しており、1回4,000円の申し出で青・緑・紫・赤といったカラフルな色でライトアップする事ができる。主にに市民の誕生や結婚等の慶事や転出入のあいさつ、会社創立などの記念に点灯されるらしく、市内・道内だけでなく、本州からの点灯申し出もあるらしい。
また、点灯者は「○○へ。結婚おめでとう。ユウスケ」という感じで新聞に必ず掲載されるが、これが室蘭市の収入源の一部となっているらしく、なかなか面白いと思う。

さて、夕日が沈んで暗くなってきた頃、7本のアンテナが7色の色を帯び始めた。
今日も誰かが誰かの為に光を灯しているのだろう。聞いてみると、この鉄塔は申し出による点灯にもかかわらず、連続点灯3000日を突破したとか。
街の方角を見下ろすと、ハロゲン灯で照らされてオレンジ色に染まった工場地帯が眼下に見える。
ベンチではどこかのカップル達が夜景ムードに浸っている。

(こういう時、流石に一人身は苦しいものがあるな・・・ん?)

よく見れば、このムーディな展望台で僕のように一人で寂しくうろうろしている人間がいる。片手には丸い物体。・・ヘルメットを持ったライダーだろうか。

さっそく話し掛けてみる。
CBR250に乗る彼は泊まる場所が見つからなかった為、ライトアップされた展望台にテントを張ろうと思っていたらしい。
「山頂は風が強いからテントは危険だよ」と、宿泊施設へ連れて帰ると、他の旅人が既に3人来ていた。
そしてみんなで銭湯に行ったりコンビニでメシ食ったりして、夜は更けていった。

1度きりの夜。もう戻らないひととき。今夜巡り逢えた偶然に乾杯。



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