「Akito君、今度は上海ね」

へっ⁉︎

年明けに転職した会社は、あたかも隣の部署へ書類を取ってくる位の感覚でよく出張する。毎週のように乗る新幹線にはもうすっかり慣れたものの、今度はまさかの飛行機(それも国際線)ときた。
さすがに耳を疑って訊き直したものの、課長は「だから上海、シャンハイ、Shanghai。あ、英語頑張ってねー」という調子なので空耳ではなさそうだ。
目的は中途採用者向けの研修とのことだけど、そんなのeラーニングでやりゃいいじゃん。ウン十万も掛けて海外で3泊4日研修とかほんまどないなっとんねん…

そんなわけで出発当日。


羽田の国際線ターミナルの出国審査を抜けると、ANAのボーイング787-8がお出迎え。


こいつは去年広島へ行く時にも乗った最新鋭の中型双発機だけど、単に低燃費なだけでなく国内線から長距離国際線まで使えるフレキシビリティも大きな特徴だ。スーツでいえば普段の通勤からパーティー、冠婚葬祭までこなせる頼もしいヤツといったところだろうか。


予定時刻にテイクオフしたB787は、層雲を突き抜けて順調に西を目指す。今まで国内線でよく使ってた羽田をANAで飛び立ったということで、このまま国境を越えるという感覚に乏しいのが正直なところ。でも、液晶画面の現在地マップを見ると確かに九州上空を通り過ぎて東シナ海を目指している。

そして離陸から3時間あまり。

フラップを下ろして着陸態勢に入った機窓から、今まで見たことのない雰囲気の街並みが現れはじめた。


来てしまった…
中華人民共和国!

つづく