通勤電車トラブル⑥

コンビニの軒先の日陰に入ると、やっとスマホ画面がまともに見え始めた。

…あぢい。

昨日まで2月だったとは思えない陽気だ。
Googleマップで近くの総合病院を探すと、警察署から5分ほどの近所にあることがわかった。よし、すぐに診てもらって診断書を発行してもらおう!と思ったものの…

「あいにく、午後は予約の患者様のみの受付となっております」

え?あ、そう…なの…

流石は人気ゼッチョーな大病院様、患者をさばききれないのか一見さんは午前限定だそうな。てか、あと30分早ければ診てもらえたなんて悔しくてハンカチ噛んじゃうんだから!ムキー!!

仕方ないのでスマホで脳神経外科の病院を探すと4km先に発見。バス1本で行ける場所だったけど、運動も兼ねて徒歩でスタスタ向かうことにした。今朝チャリ通勤できなかったから少しでも運動しなきゃ…と思いきや、歩き始めた幹線道路沿いにはファミレス、パン屋、寿司屋、焼肉屋、九州とんこつの店…なんだこのイバラの道は。こいつら全員俺のダイエットを水の泡にしようと!なんのこれしき…と歯を食いしばったけど、昼食として結局ミニストップのおにぎり2個で妥協(メシ抜きでウォーキングは無理でした)。

そして、40ほど歩いた末に病院に着いた。

駅からはだいぶ離れてて仕事帰りには通えない場所。多分2度と来ないなー診察券増えるのやだなーと思いながら初診であることをナースに告げた。

「承知しました。今日はどうされました?」
「見知らぬ人にぶん殴られまして」
「なっ…⁉︎」

昼下がりの病院のロビーが一瞬ダークネスな雰囲気に染まりかけた。いやそんな目で見ないで、ボクそんなにヤンチャじゃないんだってば。もう35歳だし。

幸い病院は空いていたので、すぐさま院長先生による触診とCTスキャンを実施。結果として、打撲で腫れ上がっているものの脳への損傷はみられないとのこと。ただし受傷箇所があと5cmほど目の方へずれていたら眼球破裂もあったというから、ひとつ間違えれば一生片目での生活を強いられていたというわけだ。本当になんなんだあのオッサン、さっさと手錠かけて逮捕祭り開催だ。

そんなわけで、院長先生謹製の診断書を握りしめて再び警察署へGo。伝書鳩みたいで面倒くさいけど、傷害事件の被害届が受理されるにはこいつがどうしても必要だから仕方ない。奴が檻の中へブチ込まれますように☆届けこの想い☆と乙女チックな祈りを込めて担当刑事に診断書を提出した。

再び警察署の外へ出ると、そこには遠い山の向こうまで澄み渡る夕焼けが広がっていた。やれる事はやり尽くした、あとは時が熟すのを待とうではないか。

入口横に立っていた警察官に思わず敬礼をし、僕は悠然と帰路についた。
その夜、一本の着信がスマホを震わせた。

声の主は昼間の担当刑事。彼の「報告」をひと通り聞いた僕は吸い込んだ息をゆっくりと吐いた。

「そうですか…奴は逮捕されましたか」

(つづく)

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