駅員たちに連れられて駅長室に来た僕と加害者(容疑者)の男は、それぞれ別々の部屋に通された。

余談だが、この駅長室にはかなり前に一度来たことがある。この駅からは支線が分岐しているが、当時小学3年生だった僕はその支線に本線と間違えて乗り込んでしまい、途方に暮れていたところをこの駅長室で一時保護されたというオチだ。

あれから27年後、まさかサラリーマンになって再び来ることになるとは…本当に人生はわからないものだ。

「では、何があったのか話して頂けますか?

氷嚢を手渡しながらそう言った駅員に、僕は一部始終を話し、防犯カメラの映像があればそれを確認して頂きたい、とも付け加えた。こっちは何もやましい事がないので、事情聴取みたいのはさっさと終わらせて出社したいところなのだ。

ふと、向こうの部屋から男の冗舌な話し声が聞こえてくる。時折笑い声も聞こえて気分上々の様子だが、奴は今の状況がわかっていないのか頭おかしいのか。こっちは終始しかめっ面なので、端から見たら僕がやらかした側にしか見えないだろう。ズキズキ痛む顔面に氷嚢を当てながら、久々に理不尽らしい理不尽を味わう朝のひと時である。あーぶっ飛ばしてぇ

そして、ひと通り駅員に状況を説明した僕はスマホで上司に電話を掛けた。このあと一応病院にも行くとなれば午前半休は避けられない、後で色々説明するのは面倒だけどこの際やむをえないところか。このあと病院で開院1番に診てもらって午後すんなり出社…と青写真を描いていたその時、駅長室の扉から制服を来た誰かが入ってきた。

「どうも!○○警察の者です。これから調書をとりに警察署までパトカーで移動して頂きたいのですが」

え…俺も行かなきゃいけないの?
うげ〜

(つづく)