現行型ハーレーのエンジンは、FI化や排ガス規制の関係で、大幅にパワーダウンされています。
僕もTryfinityの納車以来、ずっと気に入らなかった項目の一つとして『パワーの無さ』がありました。
それを何とかしようと、吸排気系の変更やFIコントローラー導入によって、何とかノーマルキャブ車ぐらいの加速を得ることは出来ました・・・が!
ある日某HDサイトでこんな書き込みを見つけてしまったんです。
『オーバーラップのほとんど無いノーマルカムをハイカムに変えると、封印されていた本来の性能が解き放たれる』
封印・・・?(←この言葉に弱い)
それってもったいなくない?
せっかく大型二輪免許取って1450ccのバカでかいバイク買ったんだから、排気量相応のパワーを味わいたい!
という事で遂に入れてしまいました・・・ハイカム!
さて、時は3/18 AM9:30。
国道沿いの某所にあるTR秘密工場。
FLTRマスターであり、プロのエンジンチューナーkazuさんの強力バックアップにより、保証期間が1年残ってるTC88エンジンをバラしてハイカムの組み込みを開始です!
まずサドルバッグを外します(あとでマフラーを外すため)。
シートを外します。
メーターダッシュを外します
スカイライン2台に睨まれて怖いです(笑)
フューエルタンクを外します。
フューエルホースを外すとガソリンがどばどば出てくるので、予めガソリン携行缶などを用意しておきましょう。
※06年以降のツーリングモデルは、メインハーネスをスッキリ収納する樹脂カバーが採用されています。
マフラーを外し、エンジンオイルを抜きます。
あれだけでかかったツーリングモデルが小さく見えます。
エンジンヘッドカバーを開け、ロッカーアームサポートを露出させます。
ロッカーサポートASSYを外し、プッシュロッドを抜きます。プッシュロッドはIN側(銀)、EX側(黒)を混同しないように!
ちなみに前バンク側はすんなりサポートを外せるんですが・・・
後ろバンク側はメインチューブが邪魔をして外せません!
Akito:「ど、どうしよう・・・もはやこれまでか・・」
kazuさん:「ロッカーアームを外せばいけるよ」
呆然とする僕をよそに、ハンマーとピンポンチを使ってロッカーアームシャフトを抜くkazuさん。
あっという間にロッカーアームが外れ、プッシュロッドを抜くことに成功!流石すごいです。
※プッシュロッドさえ抜いてしまえば、ロッカーアームサポートは横にスライドさせる事で外せます。
プッシュロッドカバーを外します。国産アメリカンのエンジンみたいになりました。
リフターカバーを外し、もぐらのようにひょっこり頭を出した油圧リフター(カムとプッシュロッドの間にあるもの)も外します。
これでカム山の上に鎮座していたものが無くなったので、いよいよカムシャフト交換です!
今まで載せるのを忘れてましたがカムカバーを外します。顔を出したカムサポートプレートが何ともメカニカル。
写真のように、ツインカムエンジンはクランク側からカムシャフトまで駆動をチェーンで伝達しています。
ここでTC88タイマーカバーのワンカムっぽい形状は完全にダミーであることがわかりますね。カムチェーンはテンショナーで常に張りを維持していますが、オレンジ色のシューは2万kmごとに交換しなきゃいけません。交換が面倒な方は、S&Sやアンドリュースから出ているギヤドライブキットに換えちゃいましょう。
さて、いよいよカムシャフト交換ですが、ここでAkitoがこの日のために用意したJIMSのSST(特殊工具)が登場!
クランクシャフト&カムシャフトスプロケット・ロックツール(CCI P/N:20294)
クランク側スプロケットとカム側スプロケットを外す際、スプロケをロックしないとレンチと一緒にぐるぐる回ってしまいますが、これで双方のスプロケをがっちりロックすれば、スプロケを留めているボルトをレンチで緩めることができます(クランクスプロケットとカムスプロケットの間に入れて使います)。
これでまずクランク側スプロケットとカム側スプロケットをロックします
カムチェーンテンショナーツール(CCI P/N:20293)
キットはテンショナーツールとホールドピン2個の合計3個で構成されています。テンショナーツールは、プライマリカムチェーンに強力な張りを持たせているテンショナーをがっちり掴んで逃がすもので、ホールドピンは、プライマリカムチェーンから逃がしたテンショナーをその位置で固定させるものです。
これらでプライマリカムチェーンの張りを解除したら、クランク側スプロケットとカム側スプロケットをチェーンごと外します。
プライマリカムチェーンとスプロケ軍団が外れました!
(テンショナーは逃げた位置でホールドピンで固定された状態)
黄色い矢印のボルトを6コ緩め、カムサポートプレートを外します。
セカンダリカムチェーンを介した2本のカムシャフト(前バンク&後バンク用)が、ベアリングと共にカムサポートプレート裏側に圧入されています。さっきと同じ要領でセカンダリカムチェーンを外し、ハンマーとピンポンチでカムサポートプレートのベアリングからカムシャフトを抜きます。
※実際にはkazuさんが作業をしてくれました。ここらへんになるとAkitoは全然わかりません
今回用意したTW37Bカムにセカンダリカムチェーンを着けます。
※双方のカムシャフトについたポジマーク同士が、互いに内側を向くタイミングにすること。
(あとでクランク&カムスプロケを装着する時もポジマークのタイミングを守る)
ハンマーを使い、2本のカムシャフトをそれぞれベアリングにはめこみます。
kazuさんの職人の手が写っています。
(僕はただデジカメのシャッターを押してるだけでした)
あとは逆の手順で組み上げれば終了!
全て組み終わった頃には、作業開始から12時間経過していました(kazuさんすみません)
で、早速のインプレですが・・・
イグニッションをONにしてセルボタンに親指を添えたけど、もう心臓バックンバックン。納車した時みたいに緊張しまくりです。
「遂にハイカム入れちゃったよ!」一体どうなってしまうのか!?(←なんのバラエティ番組だ)
と思いながら、深呼吸してセルボタンを押し込んだ次の瞬間!
キュルキュル・・ズドォォン!!
エンジン掛かった。なんかアイドリングから明らかに違う!
一発一発の爆発力が強くなっているのか、まるで別のエンジンに載せ替えたみたいの変貌っぷり・・
いざクラッチを丁寧に繋いでゆっくり走り出してみたんですが・・なんだかスルスル走り出す。
全然スロットルを捻らない燃費走行なのに、車体が明らかに軽くなったかのようです。
ちょっとスロットルを開け気味にすると・・・
ドッパッパパパパ!!
こ、このパルス感!
ノーマルカムの時は、スロットルを開けても「ドロロロロロロ~!」という連続した排気音だったんですが、
ハイカムだと明らかに一発一発の爆発が際立っていて、感性のツボをビリビリと刺激してくれます
もちろん、ぐいぐいと加速してゆくスムーズさも非常に快感!
そして東名高速に入り、いよいよTW37Bの得意分野である中高回転まで回してみることに・・・
巡航状態から1速落とし、3000rpmでキープした後・・一気にフルスロットルした次の瞬間!
ヴバ―――――!!!!!
「!?」
突如キチガイ加速開始!
スポーツネイキッドのような加速G。今まで聞いたことないエンジン音。
スピードメーターを見ると、そのクラシカルな盤面上で針がありえない動きをしている。
こ・・これがツインカムの封印されていたパワーなのか!?
ハイカムを入れることでエンジンの性格が激変するという雰囲気はわかっていただけたと思いますが、もっとわかりやすく書くと、今回のアンドリュース製TW37Bカムの場合、0~3000rpmまでは体感トルク1割増、3000rpm以上の爆走域では3割増という具合です。
(ちょうど3000rpmまでは通常走行域で、それ以上は遊ぶ時しか回さないので、TW37Bの特性は燃費的にも気に入っています)
今回、貴重な時間を割いて強力にサポートしていただいたFLTR.JPのkazuさんには心から御礼申し上げます。
心臓部に手を入れること(チューニング)の喜びを素人ながら大いに体験することが出来ました。
ハーレーのカスタムは見た目だけじゃない。そのいろんな可能性の魅力をこれからもずっと楽しんでいきたいと思います。