先日、長野県に用事があり、レンタカーを2日間借りたので軽くインプレッションしてみちゃうぞ。
借りたのは日産・ラティオ(N17後期型)。

5人乗りのコンパクトな5ナンバーセダンですが、それ以外に特徴がない上にCMもしていないため、スズキ・キザシ以上に存在が知られていない珍セダンです。K13マーチと同じタイで生産される逆輸入車で、あまりの不人気に1代限りで国内販売の打ち切りが決定したというから、一体どんなキワモノかと逆に興味津々でした。
  フロント。最近の日産車に増えている矢じり型ヘッドライトですが、プロジェクタータイプでないためコンパクトな車体に対して少々でかすぎる印象。プロジェクタータイプにして上下幅を薄型化すれば良くなりそうですが、ベーシックカーにそこまで求めてもしゃーないか。ちなみに全グレードハロゲンしか設定なし。

真下にある黒いひし形のニセダクトはフォグランプ(オプション)取り付け穴の蓋。ひっぺ返してキャリパーまで冷却ダクトを這わせてやりたくなります。フロントグリルは黒樹脂(無塗装)の横ルーバー3本。メッキフレームで囲ってるとはいえバンのように安っぽい。メッキ加工してやろうか。

ナンバープレート用のリセス(窪み)が日本のものと合っていないのは外車(?)の証。日本以外には北米、南米、アジア、オセアニアでも売られています。
  全グレードともエンジンスペックはDOHC直列3気筒1200cc、79PS/6000rpm、10.8kgm/4400rpm、アイドリングストップ機能付。K13マーチ、E12ノート(スーチャーなし)と同じ低燃費型エンジンです。トランスミッションは副変速機付CVTでなかなかのワイドレンジですが、これで1030kgの5人乗りの車体を引っ張るので動力性能は期待してません(笑)。Akitoがよく街乗りしてる同じエンジンのマーチは意外ときびきび走りますが、今回は大人3人+荷物満載で高速走行。一体どうなってしまうのか?
  サイドビュー。ホイールベースはノートと同じなので実質的にはノートセダンといったところでしょう(ただしスーチャー仕様は無い)。

今回借りたのが下級グレードにもかかわらずドアハンドルがメッキ仕様だったり、全長・全幅が限られる中でキャビンを広くとった割にあまり寸詰まり感は感じないのは好印象。ただしタイヤハウス(=タイヤ外径)が小さくてやや腰高な感じ。低燃費&小回りが求められる日本ではマーチと同じ14インチホイールですが、海外仕様みたいに16インチ化すれば少しはマシになるかな?ホイールキャップは前期型マーチと同一、ドアミラーもマーチ、前期型ノート、前期型リーフと同一。
  リヤサイド。テールランプからバンパーにかけて流れるスピード感のあるデザインは断崖絶壁のカローラより好きです。しかーし、やはりリヤタイヤの小ささがいただけない。なに?車体は小さく、キャビンは大きく、そのためにタイヤをできる限り小さくしたいだと?だったらキャスターでも着けとけ!

マフラーを見せないのは最近の環境思考のトレンド。なに?排ガスの出口があると罪深い存在みたいで後ろめたいだと?だったら溶接して塞(略

  黒樹脂パーツのみのインパネ周り。商用車級の安っぽさ、ここに極まれり。今どき軽ですらもう少し華やかだと思うんですが、世の中には「虚飾を廃した質実剛健な実用車」を求める層もいらっしゃるわけです。まるでプロボックスみたいに、色気は無いけど運転に必要な装備はひと通り揃っているので、乗ってるうちに「実はこれで充分じゃん」と少し見直しました。鍵は最上級グレード以外はスマートキーなんてシャレたものではなく、板キー(キーレスエントリー付)をキーシリンダーにぶっ挿すベーシックな方式。ちなみにインパネの大物パーツはマーチと同じものを使用し、それ以外の中物、小物パーツは専用品。マニュアルエアコンの操作パネルは生意気にメッキリングなんぞ着いてますが、センターコンソールは所詮下級グレードなのでマーチ用が着いていて、「要は走りゃいいのよ」という人向け。ナビはベーシックグレードですが、Bluetooth対応なのは地味に嬉しい。
  メーター。下級グレード専用の色気の無いタイプで、これも基本的にはマーチの上級グレードとほぼ同じ。マーチとの微妙な違いは、立体感の無いのっぺりした原チャリみたいなメーター盤面であること。メッキリングはエアコン操作盤ではなくこっちに奢って欲しかった。しかし、一応おもちゃみたいなタコメーターが着いてることは評価できます(中級グレード以下のマーチはタコメーター無し)。まぁ所詮ベーシックカーだし、そもそもCVT車にタコメーターなんて飾り(略

  ドアトリム。下級グレードだけあって見事なまでに樹脂パーツのみ。アイリスオーヤマでも作れるんじゃないか。このクルマに限らず、最近はドアポケット内にボトルホルダー形状のある車種が多いですが、ここに実際にドリンクを入れてる人を見たことがありません。そりゃそうだろ、こんなとこに缶コーヒーのジョージアとか入れながらドアをバタンと閉めたら、速攻でぶちまけてエメラルドマウンテンの芳醇な香りがエアコンの内気循環でフォーエバー21って感じです。

お次は撮影し忘れたけどラゲッジルーム。3人分のスーツケースを余裕で飲み込むほど広い。普段マーチに乗ってることもあるけど2.5倍はある。死体なら2体はいける。トランクルーム上面は鉄板剥き出しだけど、どうせ覗きこまなきゃ見えないし気にしない。ただしトランクスルー機構がないのは実用車の風上にもおけん。なぜそこだけ高級セダン並の防犯性なのよ。そしてトランク外側には、下級グレードはなんとキーシリンダーどころかオープナーハンドルすらない。そして車内にもない。もはや金庫並みの防犯性能、一体どうやって開けるんだというと、板キーについてるトランクオープンスイッチを押すんだそうな。下級とはいえそこまで削るか…

そして最後に走行インプレッション。キーを回してエンジンを掛ける。うむ、いたって普通だ。マーチもそうだけど、3気筒エンジンといってもセルの音もアイドリングもちゃんと普通車そのもの。特に気になる事はないし、かといって感動もない。ダウンサイジングターボ用小型エンジンの普及で、かつて直6一筋だったBMWですら3気筒を積む時代ですから、3気筒=軽という価値観も少しづつ廃れていくのかもしれませんね。

シフトポジションをDに入れて走り出す。うむ、いたって普通だ。79馬力という非力にしては大人3人+荷物を難なく60km/hまで引っ張ってく。これは一番おいしい回転数だけを使えるCVTの恩恵でしょう。小回りもアイドリングストップも効き、軽い電動パワステとあいまって普段使いの街乗りカーとしては使いやすそうです。

次にいよいよ高速走行。本線に入りいざ加速!………う〜む、遅い(笑)。シフトダウンすると3気筒らしい盛大なシンフォニーを奏でながらスピードメーターの針をじりじり上げ始めた。低速での発進加速ではCVTが変速でパフォーマンスを発揮していたけど、高速走行は変速領域が終わっているので純粋にエンジンスペックがものを言う世界。

平坦路をは難なく100km/h巡航できますが、追い越しや登坂路などではしっかりアクセルを踏み込む必要があり、エンジンパワーに余裕は無い印象です。起伏の多い高速走行をよく走る人には勧められないのが正直なところ。

最後にワインディング。意に反してヘアピンの連続するタイトな峠道をかなりのハイペースで飛ばすことになったのですが、意外にもスタビライザー装備のため、コンフォータブルな足回りの割にはロールが少なく粘る仕上がり。S字の切り返しでも揺り戻しがほぼ無く、軽い車体とあいまってクルクルと軽快に旋回してくれます。正直まったく期待してなかっただけに良い意味で裏切られました。同乗者はゲロゲロでしたが(笑)
というわけで、今回借りてみたラティオ。長所はコンパクトカー並の維持費と取り回しに、落ち着いたスタイルと広いラゲッジのセダンボディ。短所は高速ではあまり余裕の無いエンジンと随所のコストダウンの跡。装備が充実している最上級グレードでも100万前後の未走行車がいっぱいあるようですので、街乗り主体なので低燃費なエコカーが欲しいけどコンパクトカーは好きじゃない、荷室は欲しいという方にはお勧めです。カスタムベースとしてはノートNISMOの1.6L MTと足回りを移植したら楽しいクルマになりそうだけに、発売終了は少しもったいない気がします。