2011年式FLTRU(RoadGlide Ultra)のTryfinity2は、もともとケーブル操作方式のクラッチが採用されています。
これを油圧クラッチにごっそり換えてしまいましょう!

今さらですが油圧クラッチのメリットとは?

・ケーブルクラッチ特有の摩擦や伸縮、切れるリスクから解放され、操作感がダイレクトになる
・ブレーキ用と同じデザインのマスターシリンダーが着き、ハンドル周りの装備が完全に左右対象になる

まぁこんなところでしょう。ちなみにデメリットは「コストが掛かる」に集約されます。

というわけで、今回はごちゃごちゃ前置きをせずに油圧クラッチパーツを組んでいきます。

ケーブルクラッチ用のミッションサイドカバーをクラッチワイヤー、クラッチレバー類と共に全部ごっそり取り外しておきます。

次に、TC(ラッシュモア)用またはM8用の油圧クラッチ用ミッションサイドカバーにクラッチレリーズ(クラッチフルードの力でクラッチプッシュロッドをピストンで押す部品)を組付けます。クラッチレリーズはハーレー純正品は内部ピストンがかじったりフルード漏れが起きたりと問題だらけなので、個人的にはそれらの心配のない萬羽製(写真のゴールドアルマイトのレリーズ)のマジックレリーズをお勧めしたいです。

クラッチレリーズとクラッチマスターシリンダーの間にクラッチホースを接続します。
※気密性確保のため、ロックタイト(中強度)を必ず使用のこと。

今回使うクラッチマスターシリンダー(HD純正品のクロームVer.)は今後のスペア部品の入手性を考えてM8用を使いましたが、その際はクラッチホースもクラッチレリーズ等の他の部品も全てM8用を、TC用マスターシリンダーを使いたい際は他も全てTC用を用意しましょう。クラッチレリーズのピストン径はマスターシリンダーの圧送量に合わせたサイズのため、これらがリンクしないとピストンストロークの過不足が発生しクラッチプレートをうまく動かせなくなります。また、レリーズとホースの接続部のねじピッチもM8用とTC用と異なるため、これもマッチしないと物理的に接続できないので注意。

次に、クラッチプッシュロッド等を油圧用と交換します。
今回は、もともと油圧クラッチが採用されていた2013年CVOロードグライド用を用意しました。

実は、M8用のレリーズピストンがTC用のクラッチプレートAssyを押すには1mmほどクラッチプッシュロッドの長さが足りないのですが、ケーブルクラッチのような調整機構がないため、適度な厚さのM8ワッシャーをスペーサーとして使うことでドンピシャの長さに調整します。

クラッチマスターシリンダーをハンドルバー左側に装着し、ホースを接続します。
ここでクラッチレバーを着けてクラッチフルードを入れてさっさとエア抜き作業に入りたいところですが、ここでちょっと待った。
クラッチスイッチ(スイッチボックス背面にある、レバー動作時に押し込まれるスイッチ)も油圧クラッチ用に変更する必要があります。

この黒くて丸いクラッチスイッチの役割は言うまでもなく「クラッチレバーが握られていることを検出するため」です。クラッチレバー握りを検出することで、ジフィースタンドを出した状態でエンジン始動ができたり、作動中のクルコン動作を緊急キャンセルする事などに使われます。

一方、クラッチレバーはワイヤー用と油圧用でクラッチスイッチ接触部の形状が大きく異なります。
ワイヤーレバーは握った時にスイッチが押されますが、油圧レバーは握った時にスイッチが戻されるという真逆の動作になるため、これに合わせてクラッチスイッチもワイヤー用と油圧用で動作が真逆なものが存在します。

ワイヤーレバー用SW
(71620-08)
油圧レバー用SW
(71669-07)
レバーを握るSW押(絶縁)SW戻(絶縁)
レバーを離すSW戻(通電)SW押(通電)

というわけで、油圧用のクラッチスイッチ(こちらも油圧クラッを装備したCVOの純正品)を用意しましょう。

左スイッチボックスから、ケーブル用クラッチスイッチ(右/71620-08)を取り外し、油圧用クラッチスイッチ(左/71699-07)に交換します。見ての通り両者はそっくりですが、スイッチをON/OFFした時の通電/絶縁の動作が真逆になることに注意。

左スイッチボックス内のハーネスからケーブル用クラッチスイッチの配線をぶった斬り、代わりに油圧用クラッチスイッチを繋ぎ直します。当然ですがこのあと絶縁もしっかり行います。

クラッチレバーを装着し、クラッチマスターシリンダーにフルードを充填します。
マスターシリンダーを水平にするため、車体をジャッキで水平に起こした状態でハンドルを右いっぱいに切ることをおすすめします。

そしてレリーズからエア抜き作業を慎重に行い、マフラーなどを装着し直して作業完了!
ワイヤーの面倒ごとからは解放され、油圧ならではのダイレクトなクラッチワークはやみつきになります!

ハンドルのマスターシリンダー周りが完全に左右対称になるのも芸術点高い(←一番大事)

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