
それは去年の春頃から起きていた現象。
走行中にTryfinity2のフロントフォークがストロークした時、たまに「コキン!」という異音が鳴るようになっていました。平坦路を延々と走る高速クルーズ時などはそのような事は無かったのですが、街乗りやワインディング走行時の加減速でフロントフォークが大きくストロークするほど荷重が変化した時に、「コキン!」という嫌な音が鳴っていたのです。
この現象が始まったのは、確かフロントフォークをオーバーホールした直後から。となると組み付けミスか?この異音はしょっちゅう発生するわけではなく、フロントの荷重が大きく変化するだけ発生するので、かれこれ半年以上騙し騙し乗ってきてしまいました。
今後も放置したところで生き物のように自然治癒するはずがないので、重い腰を上げてフロントフォークに組み付けミスがないか再び全部バラすことにしました。

僕のTryfinity2のフロントフォークには、前オーナー様によってサンダンス製Traktekマルチレートフォークスプリングが装備されているので、全バラに備えて専用フォークオイル(Hard)を世田谷のサンダンスで購入。併せて取説(最新版)も頂きました。

さて、早速ジャッキアップしてフェンダーとホイールを外し、フロントフォークをトリプルツリーから引き抜きます。ここまでは30分でパパッとできますが、ここから先が面倒くさい。

引き抜いたフロントフォークを早速バラバラに分解。前回のオーバーホール時は初めてで夜遅くまで悪戦苦闘したので、その時の経験で特殊工具なしで全バラできました。
ダンパーロッド取付ボルトの緩みがないか?オイルシールやスライドメタルがずれてないか?その他パーツにも不自然な打痕がないか?
品質保証エンジニアの僕としてのモットーは「不具合品は無言で全てを語る」。フロントのガタを引き起こす顕著な痕跡がないか、オイルを拭き取りながら全てのパーツをいろんな角度からチェックしますが…1時間以上掛けても決定的なものが見当たらない。ぬぬぅ、意地でも見つけてやろうと思ったのに。

不本意ではありますが、ガタの原因が見つからない以上はどうしようもないので再びフロントフォークを組んでいきます。

ツアラー用(Φ41mmフォーク)のサンダンスTraktek純正指定オイルの種類は「Hard」。インナーチューブへ注入後、エア抜きのためにゆっくり50回ストロークさせます。

また、純正フォークに装備されているダンパーバルブ(伸び/縮みの減衰力に差をつけるワンウェイバルブ)を外せとの指示書きがありました。Tryfinity2にはTraktekスプリングにダンパーバルブが組み合わされていたのでサンダンスの取説内容とアンマッチしていることになりますが、おそらく取説の方が途中で改訂されたのでしょう。
既に注入した指定フォークオイル(Hard)とのマッチングも考えて、今回はダンパーバルブを外すことに決定。しかしダンパーバルブ(全長約15mm)をそっくり外すとプリロードが不足してしまうため、フォークオイルに浸からないキャップボルト真下に入れることでカラーとしての第2の人生(?)を歩んでもらいます。
というわけで元通りに組み直し、朝から開始した作業は夕方頃にようやく終了!
さっそくテスト走行ということで首都高へ。
サンダンスのTraktekに指定フォークオイル&ダンパーバルブ抜きの組み合わせは初めてでしたが、以前より一層ダンピングが効いててリアサス(QUANTUM)に近づいた印象です。路面の凹凸や橋の継ぎ目等の通過時のしなやかな追従性は本当にストレスがなく、余裕で1日500km以上走れそうなプレミアムな乗り心地。用事が特になくてもフラッと走りに出たくなる、脳汁出まくりの幸せマシーンです。
しかし、ここで満足して終わりにしてはいけない。フロントの荷重を大きく変化させた時もあの症状は再発しないのかどうか、信号待ちでフロントブレーキを掛けながらハンドルをフルパワーで上下させてフロントフォークを大きくストロークさせてみます。すると…
「コキン!」
あわわわわわ…直ってないやんか!
(続く)