そんなこんなで少しづつ色々なことが判ってきたスターベンチャー。今日はいよいよ最終回のストレージ編!ということで、ツアラー最大のアイデンティティである収納スペースとタンデムシート周りをチェックしてみよう。


後輪を両側から挟み込むように装着されたサイドボックス。一見するとハーレーのツーリングモデルみたいですが、ディテールは所々異なります。蓋とボックス本体は段差のないシームレス形状で、後端もケツ下がりではなくカットアップした独特の形状。そしてボックス本体の下部に黒い樹脂のトリムが着いていますが、おそらくこれは内部に金属製フレームの入ったリヤバンパーでしょう。ちなみにサイドボックスの蓋は上部にある黒いボタンを押すと車両外側に横開きし、手前にあるクロームメッキの物体はそのヒンジカバーです。


というわけでパカっとな。

開口部が思いのほか小さいのは、蓋と本体のシームレス形状のために防水パッキンなどのフィッティングパーツを全部内側にレイアウトせざるをえなかったのと、強度確保のために開口形状のRを大きくとったため。ハーレーに比べて荷物はちょっと入れにくそうです。また内部の深さはハーレー以下ですが、幅はリヤサスの張り出しがないことが功を奏してハーレーより広め。また蓋の鍵はスマートキー対応の電磁ロック型、というより鍵穴が見当たらないので電磁ロックオンリーでしょうか。配線処理は正直もうちょっと頑張って欲しかった。


コーションラベルには次のように印字されています。

・積載量は左右それぞれ9kgを超えないようにして下さい
・重量を左右のバッグに振り分けるようにして下さい
・取扱説明書の重量とタイヤ空気圧の重要項目をお読み下さい
・ライダー、パッセンジャー、アクセサリー類、そして荷物の総重量が取扱説明書の許容値を超えないようにして下さい
・ハンドリングへの悪影響を避けるため、120km/h以下で走行してください。この制限速度を守ることで積載量、タイヤ、その他の車体コンディション、路面状況、天候などが望ましくない場合の悪影響を低減することができます


サイドボックスの後ろ側に回りこむと…おっと、テールランプがサイドボックス本体にも着いてるじゃないの。中央のリヤフェンダー側のテールランプと合わせるとなかなか派手な印象です。そしてカットアップ(ケツ上がり)形状のサイドボックス後端ですが、この角度から見るとXV1900CU Raiderのようなダックテールフェンダーに合わせたデザインだったことが判ります。この形状だと横幅200mmのガチムチタイヤをアピールでき、ディープフェンダーのハーレーのツーリングモデルとは大分違う印象です。


リヤフェンダー周りを真後ろから。
何とも派手な3連テールランプが目を惹きます。横長のテールレンズをクロームメッキのトリムで囲んで並べたデザインは、まるで70年代のアメリカンマッスルカー。フロントの現代風の鋭い目つきとは対照的に、何ともクラシカルな古き良きアメリカンといった感じでしょうか。好みは分かれそうですが、リヤエンドはスターベンチャーのデザインで最もチャレンジングな場所と言えるでしょう。ノーマルの時点でこれだけ個性的な部分をもしカスタムしたらどう化けるのか…たとえば3連テールランプを横1文字のLEDにしてダッジ風にするとか、エアロパーツのようなエクステンションを着けるとか妄想は尽きません。


リヤボックスも蓋と本体の段差のないシームレス形状。蓋の形状はハーレーのキングツアーパックよりも後端に向けてきつい傾斜になっていますが、これはリヤフェンダーやサイドボックスに合わせた角度です。側面にはエッジも入り、「ただの箱感」のしない質感の高さはなかなかのもの。またバックレストやスピーカーボックスとの一体感も強く、同時にデザインされたものと思われます。アンテナも背面のキングツアーパックと違って側面からニョッキリ生えていますが、この理由は後ほど。


背面から見てみると、リヤフェンダーとお揃いのテールランプがお目見え。中央にはヤマハのクルーザーでは珍しく音叉エンブレムが入ってます。ここはスターエンブレムで良かった気がしますが、もしやブランドイメージ統一の為でしょうか。


パカッとな。

蓋は後ろ開きで、真後ろから荷物を出し入れしやすくなっています。つまり、先ほどのアンテナがサイドマウントだったのはそういう理由。ハーレーのキングツアーパックより薄く見えたのに、ヘルメット2つ入れても空間的にまだ余裕がありそう。また、不織布の内張りや黒い蓋の裏やガスダンパーなどに価格相応の高級感を感じます。


もっとじっくり見てみると、スピーカーの裏側にバスレフポートを発見。巨大なリヤボックスをスピーカーボックスとして使うことで量感のあるサウンドを実現しているとのことです。確かに、せっかくこんなに大きな箱があるなら有効活用しなきゃね。


他にはUSBポートも発見。スマホを繋いでマルチインフォテインメントシステムでコントロールできるかは未確認ですが、少なくともアクションカメラやパッセンジャーのスマホの充電に使えることは間違いなさそうです。ただ、内張りの切れ目からピョロっと出てるだけだと荷物が当たりまくって断線しそうだし、何より素人のDIYみたいでみすぼらしいのが残念。台座でしっかり固定したらいい感じになりそうです。


シート。
特にタックロールやピロールックでもなく、至極プレーンなデザインですが、ライダー側は小さなバックレストで腰から支える形状で長距離もラクそう。シートヒーターは無く、グリップヒーター等と同様に純正オプションで展開されると思われます。


パッセンジャー側のグラブレール。樹脂かラバーコーティングかは忘れましたが、適度に太く滑り止め処理もされていて掴みやすいです。四角いのはインターコムのPTT(Push to Talk)スイッチ。


メーカーオプションのトランスコンチネンタルパッケージ選択時に装備されるリヤスピーカー。先ほどのバスレフポート等、楽器部門のヤマハが手掛けたこだわりのサウンドが期待できますが…このプラスチック感丸出しのハチの巣グリルは何とかならなかったのかな?豪華絢爛にしろとは言わんけど、せめてフロント同様にしてくれた方が…
左右のスピーカーの下には開閉可能な小物入れスペースがあり、グローブなどを入れることができます。


パッセンジャー用のマルチインフォテインメントシステムコントローラー。右側の小物入れの蓋に着いています。ところでこのシステム、ライダーとは別々の音楽を聴いたり電話を掛けたりできるようで、ツーリング中に夫婦喧嘩しても大丈夫みたいです(笑)

というわけで、4回にわたりご紹介したヤマハクルーザーのフラッグシップモデル・スターベンチャー。日本での発売は未定なので気にしても仕方ないですが、お値段は現在の為替レートで換算すると日本円でおよそ307万円(トランスコンチネンタルパッケージ装備車)。これを個人で日本まで輸送手配すると、手段は色々あれど350万円オーバー…こいつはハードル高いぜ…

もし日本でスターベンチャーが走ってるのを見つけたらとりあえず拝んでおきましょう(笑)