というわけで、いよいよパワートレイン編!


まずは右側から。スターベンチャーの心臓、空冷OHV2気筒エンジンです。113ci(1854cc)、4バルブヘッドの強心臓は、かつてのXV1600Aロードスター(1998年)のそれを熟成・正常進化させたもの。ハーレーのエンジンは2017モデルから4バルブヘッドの「ミルウォーキーエイト」にバトンタッチしましたが、ヤマハは実に20年近く前からそれを採用していたことになります。もちろん、増加した排気量や重量に合わせて吸排気ポート形状やカムプロフィールも変更され、最新のフラッグシップにふさわしいパフォーマンスを発揮できるとのことです。エアクリーナーの奥に納まるのはYCC-T(電子制御スロットル)。フューエルインジェクションを制御するECM(エンジンコントロールモジュール)と合わせて、走行モードの切り替えやTCS(トラクションコントロール)等の安全で楽しいパワーマネージメントを実現しています。個人的にはもう少しプッシュロッドカバーを見せるエアクリーナーの方が好きかな。


続いて左側から見ると…あれ、こっちにもエアクリーナーらしきものが。まさかツインエアクリーナー?…いや、多連スロットルじゃあるまいし。近づいて見てみると、カバー裏側から出た黒いゴムホースがエンジンと繋がっていました。ようわからんけどエアクリーナーでないことは確かです。そのニセエアクリーナーのすぐ後ろには「SURE PARK」と刻印された大きなレバーがあり、力を入れると上に動きます。恐らくこれはSURE PARKのマスターレバーで、こいつを上げることでミッションからエンジン動力切り離し&モーター動力が接続され、その後に左側のハンドルスイッチの操作で車体をウィ〜ンと前後に動かせるのでしょう。
下の方にはなんとも筋肉質なミッションカバーが見えますが、同じ系統のエンジンを積むロードスターと違ってドライブスプロケットカバーがありません。つまり、ドライブベルトはなんと向こう側(車体右側)から出ています。何故ここまで大掛かりな設計変更がされたかは不明ですが、おそらく車体左側から出したリヤバンク側のエキパイをを避けたためと思われます。


左側にはリヤバンク側のエキパイ、そして右側にはフロントバンク側のエキパイと左右独立エキパイに見えなくもないですが、下から覗き込んでみると左右のエキパイがしっかり繋がっています。脈動効果によるトルク確保のためですが、スイングアームをXV1600Aのようなリジッドフレーム風から一般的な形状にしたことで生じたクリアランスをうまく通しています。


続いて左側サイドボックスの下から後輪を覗き込んでみたぜ。ドライブベルトは反対側なので当然ドリブンプーリーは無く、代わりに300mmのブレーキローターと片押し2POTのNISSIN製ブレーキキャリパーが登場。重心を下げるためかどうか定かではありませんが、重たいキャリパーがスイングアーム下側に着いてるのは好印象。リヤホイールのデザインは基本的にフロントと一緒で、タイヤサイズは200/55R16。


ここまで来たら腹ばいになって真後ろからも覗いちゃいます。この時点で端から見たら完全に変態ですが、それでも警備員が駆けつけて羽交い締めにしてこないヤマハコミュニケーションプラザ素敵すぎ。ところで真後ろから見て初めて気付いたんですが、スイングアームがやたらと薄い。内側はホイールとキャリパー、そして外側にはサイドボックスとマフラーに挟まれてるエリアとはいえ、この形で重量級ボディをよく支えたもんだ。


続いて右側からも。
ここでやっとドライブベルトとご対面です。マフラーをアメリカンツアラーらしい左右出しにするためにわざわざRSD(ライトサイドドライブ)にしたとすると、このスターベンチャーは相当気合い入ったモデルで間違いない…
ところで、普通この手のモデルであればそろそろ見えてそうなあの部品が見当たりません。


こうなったら逮捕覚悟でとことん覗き込むぜ!
真横から見てみるとドリブンプーリーが…光ってる⁉︎これはまさかのメッキか、それともグロスブラックかは定かではありませんが、普段見えないところも抜かりない印象です。それにしても右側にプーリーがあるとスポーツスターみたいな不思議な感じ。


エンジンと右側サイドカバーの間にあるドライブプーリーカバー。こちらもクランクケースやミッションケースと同様にマットブラックとシルバーで統一したコーディネートです。ただし、せっかく厚みのあるデザインなのに後端でスパッと瞬断され、隙間からドライブベルトがチラ見えしているでないの。結果、ペラペラ風のダミー感が出てしまって残念賞。感性品質を高めるには、このカバーをサイドカバー裏側まで潜り込ませて隙間が見えなくした方が良かったと思います。


おっと、ついマニアックな職業病が出てしまったので流してくだしあ。そんなこんなで目の前のサイドカバーを見てると「中はどうなってるんだろう…見たい」とまた覗き魔の血が騒いできたので、掴んでぐらぐら揺するとパコッと外れました。まぁ「外すな」って書いてないからいいよね(冷や汗
しかし、てっきりドラッグスターの感覚でバッテリーが出てくると思いきや、目に飛び込んできたのはアルミの物体。そういえば、スターベンチャーはXV1600A同様にドライサンプだからこれは多分オイルタンクかな。そして下の方には何やらホースのついた筒状の物体があり、「プリロードアジャスター」と印字されていてダイヤルが回せるようになっています。これは言うまでもなくリヤサスペンションのプリロード調整ダイヤルで、積載量に応じて減衰力を調整できる機構です。そしてこれがここに着いてるということは、リヤサスがモノショック(1本)方式であること、そしてそれがこのオイルタンクの向こうにある事に他ならない。どうりでスイングアームを覗き込んでもリヤサスが見当たらなかったわけですが、ハーレーのようなサイドボックス裏のツインショック(2本)方式ではなかったという事です。モノショック方式にした理由は定かではありませんが、考え得るメリットとしては裏にサスペンションが無いためにサイドボックス容量を最大限に稼げること、そして重いサスペンションを車体中央にレイアウトすることでマス(重心)の集中化が図れるということが挙げられます。まぁ、それとは引き換えにバッテリーやECU等の置き場所に苦労しそうですが…

というわけで、今回はパワートレイン編としてぐだぐだ書いてみました。次はいよいよ最後、ストレージ(収納)編といってみよう!