二日間の出張が無事に終わり、翌日友人に会うために再びビジホにステイすることになった静岡の夜。
熱いシャワーを頭から浴びて疲れを洗い流し、何食わぬ顔でユニットバスの栓を抜いた。

そんな何の変哲もないことを皮切りに、異変は静かに忍び寄ってきた。


「ん?…栓を抜いたのにお湯がなかなか減らない…」


お湯があっと言う間に排水口に吸い込まれていくと思いきや、5分たってもバスタブの水位はなかなか下がらない。早くお湯を抜いて上がり湯を浴びたいのに、どうなってんだこれは。

しばらく待ってても埒があかないので、途中でさっさとシャワーで上がり湯を浴びてしまった。そして何気なくカーテンを開けると…


「!!?」


そこには信じられない光景が広がっていた。

乾いているはずの床が、まるで足湯のようにお湯で満たされていた。足拭きマットはぷかぷか漂流し、水位は入口ドアを超えんばかりの高さまで達しているではないか。いくらなんでも、こんなにバスタブの外にシャワーのお湯をこぼした覚えはないぞ。

…待てよ、さっきバスタブの水位がなかなか減らなかったっけ。もし下水管が詰まっていたとしたら、行き場を失くしたバスタブのお湯は…


「脱衣所側の排水口から湧き出たか…」


なんてこった…源泉が湧き出るとは。

もし脱衣所の床に着替えを置いてたらシャレにならなかったぞ。それが商談に着て行くスーツだったとしたら…ってそんなもん床に置かないけど。

とにかく、逆流してきたのがトイレの汚水じゃなかったことが唯一不幸中の幸いだった。
いくら格安ビジホといえど、こりゃフロントにしっかりクレーム入れないと駄目だ。

ということで、洗いたての髪も乾かないまま僕はフロントへ向かうのだった。

-まだつづく-