AKITOのプライベートツーリング -HOKKAIDO 2002- 第7章

2002. 08. 01.

目が覚めると8時だった。寒い!真夏だというのに気温は8℃しかない。

「おはよう!」

声を掛けてくる人物。マジェスティの人だ。
せっせと寝袋を畳んでいる。

後ろに視線をやる。
SV400Sの大学生は、まだいびきをかきながら夢の中だ。
NSR50のバイト店員の人は食堂の開店準備という事ですでに仕事に出ていた。

僕達が寝泊りした「ライダーハウス熊宿」は土産物屋兼食堂の裏手にある。前回も同じことを書いたが、ここは宿泊無料。食堂『熊の穴』の主人の御好意で開放されている。しかも、無料であるにもかかわらず、コンセントや水道も使わせてもらえる。本当に心から感謝した。
熊宿の窓から店の裏が見える。そこにはトドの肉が干してある。そう、ここはオホーツクの漁師の町、羅臼。ちなみに年間平均気温はわずか5.3℃だという。

みんな、いそいそと朝食の準備をはじめる。
各自自慢の調理器具で湯を沸かし始める。
僕の朝食は、カップメン『一平ちゃん』。
もうすぐ別れる旅人たちとの朝食。
何度も同じような体験をしたが、すべて忘れることはないだろう。

朝食が終わり、SPITFIREの積載ボックスに荷物を放り込む。
今日はまだ行き先が決まっていないが、とにかく出発だ!
風の吹くままに走っているうちに、どこかへ辿りつくだろう。

僕を含め、いよいよ3人が熊宿を出発する時。仕事中だったNSR50のバイト店員が店から出てきて、見送ってくれた。
「じゃ気をつけてなー!!またどっかで会おう!!鹿の飛び出しにゃ注意だぞー」

知床岬へ延びる道路の末端に位置する『熊宿』を出た僕は、とりあえず羅臼町市街地を目指して道を南下し引き返す。市街地まで30km近くあるので、ゆっくりのんびり行く事にしよう。今日は濃霧がでていて視界は最悪だけど、オホーツク海沿いのこの道路、晴れてる日は国後島が目の前に見えるという。

しばらく行くと、ごろごろ石だらけの浜辺にぽっかりと穴があいている場所を発見。穴は水らしきもので満たされていて、湯気が立ち上っている。ここは岩礁から湯が沸きあがる「セセキ温泉」で、もちろん目の前にはオホーツク海がある。満潮時には水没し、また脱衣所も存在しないという、何とも野性味溢れる温泉だ。ちなみに『北の国から2002 遺言』でもこのセセキ温泉は登場している。

残念ながら雨が降りそうなほどの濃霧だったため、僕は通過した。

羅臼町市街地まであと15km程だろうか。
順調に霧の中を走る。

その時だった!!!!!

濃霧の中、右側から影が突然飛び出してきた!
複数の影・・動物か!やばい、ぶつかる!!

ブレーキレバーに力を込めようとした瞬間!!!

ドシン!!!!

右から大きな衝撃が襲う!!
フロントタイヤに右側から何かがぶつかったのだ!!
はね返された物体は今度はエンジンガードに当たる!!

ドン!!!

「ギャッ!!」

今度はうめき声が聞こえた!
衝撃で左側によろめきながらも、SPITFIREを路肩に停止させた。

「ぶつかっちまったのか・・・」

頭の中が動転し、膝が震えている。嫌な汗が背中をつたった。
ミラーで後ろを見る。そこには・・・・道路の真ん中で倒れている一匹の鹿。

それは嫌いな風景だった。

子供の頃、家族でドライブに行った時に何度か見た風景。
冷たいアスファルトの上に倒れている猫。車がそれを次々によけていく。


「ちくしょう!!!!」


エンジンかけっぱなしのSPITFIREをその場において、鹿のもとへ駆け寄る。

『頼む、起きてくれ!!!』

願いが通じたのか定かではないが、やがて鹿はゆっくりと起きた。
僕は何をすればいいのかわからなかったが、気がついたら鹿に頭を下げていた。

「ごめんな・・・・ごめんな!!」

鹿は僕には目もくれずに、飛び出てきた山側の方を向く。
そしてゆっくりと立ち上がる。

『起きれるのか?』

しかし、やはり無傷というわけにはいかなかった。
鹿は左前足が折れていた。

僕は動けなくなった。

鹿はやがて、左前足をひきずりながら飛び出してきた山側へと入っていった。
その姿を急いで追った。

そして、僕はふたたび動けなくなった。

左前足をひきずった鹿。そして、そのまわりに集まった7匹ほどの鹿。

全てが、刺すような目で僕を見ていた。
それは、言葉なんかより遥かにリアルな、「人間共へのメッセージ」だった・・・

「住み良い町づくり」の名のもとに、大地をアスファルトで埋めつくし、山を切り崩し、全ての動物のものであるはずの大地を区分けし、金で売買する人間。熊などがうっかり入ったら、発見次第即銃殺。行き場を失った野良猫などの動物は、毒ガスで処分されるか、車に轢き殺されるかの運命。
そう、地球の全支配権を掌握した人間は、動物を殺しながら快適に生きているのだ。

いつからお前たちはそんなに傲慢になったのか。
いつからお前たちは俺たちの親、仲間、故郷を奪いはじめたのか。
そんな権利お前たちにあるのか?

鹿たちの目が伝えた事。忘れる事など到底できそうにない。

SPITFIREのもとへ戻り、ぶつかった箇所を確認する。鹿が衝突した箇所に視線をやる。鉄製の頑丈なはずのフロントフェンダーの右側面がべっこりへこんでいる。車体を前後に動かしてみる。抵抗なく動く。幸いタイヤとは干渉していないようだ。

衝突時に過大な力が加わった為か、右側のフォグランプは真横を向いていた。そして右ウィンカーがあったはずの場所はちぎれた配線がぶらぶらしていた。どうやらウインカーは吹っ飛んだらしい。

再び車体を見回すが、これ以上の損傷箇所は見つからない。また、血液は付着していなかった。鹿に目立った外傷は無いという事か。その事実を確認し、安心しようとする自分にはっと気がついた。所詮自分に都合のよい綺麗ごとを並べてるだけに過ぎない。

道路を探したら泥だらけのウインカーが見つかったので、海で綺麗に洗い、ハードサドルバッグに放り込んだ。

走る気はかなり萎えてしまっていたが、SPITFIREの修理が必要なのでホームセンターのある町へ行く事にした。
羅臼町市街地まで戻り、知床半島を横断する「知床横断道路」へとマシンを走らせる。

この道路は道内でも人気が高い道路らしい。
御覧のみなさんには、道路沿いにある羅臼町営の無料露天風呂「熊の湯」を併せておすすめしたい。

知床峠を越えると、斜里町に出た。峠を下る途中、H-D FLHTC(エレクトラグライド・クラシック)に追いつく。
かっこよかったのでピッタリくっついて走ると、向こうはスピードを上げた。
ムキになって僕も追いかけた。なんて速いんだハーレー!!そのうち海沿いへ出て、ハーレーは「オシンコシンの滝」の駐車場に入ったので、僕も続いて駐車場に入った。

ハーレーのオーナーとしばし旅話をして、せっかくだから滝を見る。

断崖から勢いよく流れ落ちる「オシンコシンの滝」。
写真のように、流れが2つに別れることから「双美の滝」とも呼ばれているらしい。

さてどこへ行こう。
ホームセンターを探すなら、斜里の駅前を探してみるしかない。

「とりあえず、途中まで一緒に行こうか!!」
というわけで、ハーレーと斜里駅前まで一緒に行くことになった。

知床の山と海に挟まれた道の風景は次第に田園へと変わり、45分ほどで斜里駅前へ。

「じゃぁね!」

と、ハーレーのオーナーと駅前で別れるが、この後ホームセンターを探して駅前をのろのろ走っていると再び彼と3回もすれ違った。なんか気まずい。

ホームセンターでボルトやビニールテープを買い、ついでに買った菓子を食べながら修理をする。
汗が地面にポタポタと落ちる。暑い!羅臼町の朝は8℃くらいしかなかったのに・・・。

修理を終えたときは既に15時だった。

「随分時間食っちゃったな。急がねば!・・・しかしどこ行こうかな??」

とりあえず近くの「道の駅 はなやか小清水」ヘ行って、それからルートを考える事に。
しかし・・・全然決まらない。俺はどこ行ったらいいんだろう??

そんなこんなで約2時間ツーリングマップルと格闘している内に辺りは暗くなり、更には雨も降り出した!
どうする?今夜はどこで夜を明かそう!?

近くにはキャンプ場もあったが、この土砂降りの中テントを張るなんて正気の人間のする事じゃない。

さんざん考えた挙句、第5章で行った屈斜路湖畔にある川湯温泉街のライダーハウス「蜂の家(800円)」に泊まることにし、レインスーツを被って雨の中60km走ることになった。

川湯温泉とは・・・その名の通り、川から温泉が湧き出ているところで、温泉街らしくホテルや旅館なども立ち並んでいる。ライダーハウス蜂の家はコンビニも近く、また屈斜路湖半の無料露天温泉群もすぐそばにあるので、ここもみなさんには是非お奨めしたい。

この日は疲れていたので22時就寝でした。クカー・・・zzzzz



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