そんなこんなで、今回の傷害事件の被害者として警察署に行くことになってしまった僕。

本当はぶん殴ってきたオッサンだけ手錠を掛けて連行して欲しいところだったのに、思った以上に大事になりつつあるようだ。

でもよくよく考えてみたら、調書を作る時に加害者側からしか事情聴取しないのはどう考えてもまずいよな…ましてや今回の相手は衆人環視の中で後先考えず他人をぶん殴るアホ危ない奴だし、一部始終を正直に話すわけがない。

仕方ない、行くか。

「こりゃ1日潰れるな…」

僕は上司に電話で午前半休から有給休暇への変更を申し出て、待機していた警察官たちと駅長室から外へ出た。
駅前ロータリーで待機していたパトカーの後部座席に乗り込むと、そこからは警察密着番組によく出てくるあの景色が広がっていた。

「はいパトカー発車しまーす」

助手席の警官がマイクで車外スピーカーからDJしながら、警視庁と書かれたクラウンのパトカーはリヤサスを沈ませて急発進した。この警察官、なかなか運転が荒い。

交通量の多い駅前から警察署まで前後左右に豪快に車体を傾けてダイナミック走行するので、下手にスマホ画面を見続けてるとさっき食べた朝食が逆噴射しそうになる。サスがフニャフニャな上フル乗車のクラウンでようやるわ。

そして警察署に着くと、「刑事課」というプレートが掲げられたエリアの小さな部屋に通された。続いてノートPCを持った担当刑事が入室してきたので、お互い挨拶もそこそこに事情聴取が始まった。
(つづく)